澪樹…こんな世界で
ある夜
あいつと僕の二人に与えられた寝室で
夜中に泣きべそをかいているあいつの気配に感ずいて
僕は目を覚ました


あいつは昔の記憶を取り戻しつつあるようだった

その夜 一睡もしないで
ぼくとあいつは高校時代以前の想いで話に花を咲かせた


「ありがとう 景  よくもどってきてくれたな…」


キムに何らかの、 少なくともキムの歌声に何らかの
病気の比喩力が備わっているらしいことは疑いようのない
事実だった

しかも
歌うことで
キム自身の比喩力も高まっていくらしい

キムはそんな事実も知らないで
キャラバンで隔離されたまま 窮屈な毎日を送っていたのだ




村人たちとの別れは
一ヵ月後だった


彼らは皆健康になった身体を元手にこの地域で農業を再開するらしい



僕たちは再び旅に出た

僕はとてつもない重圧に押しつぶされそうだった

僕の面倒の見ている
八歳の少女は
この世界を変えていくだけのとてつもない大きな力を持っているのだ

僕とあいつは誰かに助けを求めたい気持ちでいっぱいだった


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