あなたのモノ




「いってらっしゃい」


「いってきます」

そのまま行くのかと思ったら
湊は私に手招きをする。


どうしたのだろうと思いながらも
素直に近寄る。



「…わっ」


急に抱き締められた。

そして…唇が重なる。



「…どうしたの?」

唇が離れて、聞く。



「なんか離れて
行きそうな気がして……
どこにも行くなよ…」

湊の悲しそうな顔を見て、
胸がギュッと締め付けられる。



そして安心させるように
笑顔を作って


「どこにも行かないよ…?」




私は嘘をついた。



ごめんね…湊





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