あなたのモノ
「考えてみると、
おかしいことばっかだった。
馬鹿だよなぁ…
でもさ、置いてかれる方の身にもなれっての。
あっちは言いたいこと言って
スッキリしたと思うけど、
俺はなんも言えなかったんだよ。
すげぇ悔しかった。
しかも、ぽっかり心に
穴空いたみたいになってさ…
改めてそいつの存在の大きさに
気付かされたんだ。
最低な奴だったけどな。
そのことがあってから、
人を信じられなくなった。
皆みんな、俺が次期社長だから、
つるんでんのかなって
疑うことしか出来なくて。
今は男友達のおかげで、
信じれるようになったけど
まだ女はちょっと…
軽い付き合いならいいけど
付き合うとかはできないんだ。
裏切られるっていうことが
ほんと怖い。
彼女はつくらないんじゃなくて
できないってことだよ」
悲しそうに笑う湊を見て、
抱き締めたくなった。
抱き締めたくなったというより
抱き締めてしまった。