幸せな夢。
キャバ嬢

私と彼

「曖羅ちゃん、欲しいモノないの?」



必死に笑って接客していると、酔っ払った口調で客は私に聞く。
正直、迷惑な話だけど、これが、私の仕事。
しょうがない、いつもの事だから。



「え? 欲しいモノですかー」



考えたように答えると、客は喜び、笑いながら札束をテーブルに置く。
何時もの事なのに…。
私は、『オヤジに飼われてる』と言っても可笑しくない。
生活費から、身の周りのモノまで全て、客が買ってくれたモノだから。
それに、今住んでいるマンションだって、ある客に買ってもらった。
そして、合鍵を持っていかれた。
でも、そのお陰で、私は今を生きているんだと思う。



「何でもいいよ、言ってごらん」
「…ワンちゃんが欲しいな♪」
「今度アフターの時買いに行こう」



まるで、子供の機嫌を取るように客は私に必死に貢ぎ、気に入られようとする。
それは当然の事だと、ママは言った。
この世界で一番強いのは、お金。
同時に一番怖いのもお金だって…。



「じゃあ、また指名とらせて貰うよ」
「はい♪ お待ちしてます」



毎日毎日、客は金を持ってここに来る。
三十万とかする無駄に高い酒を飲んで酔っ払って、絡んでくる。
けど、そうしないと私の時給が上がってくれない。
私だって生きている。
明日が来るって信じるの。



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