幸せな夢。
「なぁ? 曖羅、どうして水商売なんかに入ったんだ?」
「…お金」
「やっぱり金か。この世界じゃ金が強いな」
「だよね。お金が全てを握ってる。ねぇ、拓? しょうがない事だけど、水商売を辞めたら、私は今までの生活ができなくなる。生きていけなくなる。そしたら、拓にも会えなくなって、また、施設に入れられちゃうかもしれない。そんなの嫌だよ。もう、あんな所に戻りたくない」
「曖羅…」
「拓、あのね、必死に働いて人より上を稼がないと、私は施設に戻されちゃうんだ。そんなの嫌だよ? やっと掴んだ幸せを失いたくないの。もっと、拓と、遊んだり、喧嘩したり、泣いたり、笑ったりしたいの。今まで通りの、当り前の生活を続けたいの。だから、水商売辞められないの。ごめんね」
「そんな心配せんでも、俺はお前を守るつもりや」
「えっ?」
「お前が、あそこから逃げ出したって事も、ママさんが援護して雇ってくれとるのも、俺は知っとる。それに、お前が人一倍頑張って働いて、稼ぎよるのも、十分理解しとるつもりや。もちろん、泣き虫で強がりで、人一倍素直じゃないって事も!」



拓、分かってくれてたんだ。ちゃんと見てくれてたんだ。



「拓…あじがどぉう!」
「っておい! 泣くなよ」
「だっで、嬉じいもん…」
「一生一緒に居てやるから、心配すんな! お前の笑顔も、泣き顔も、怒った顔も、全部見てやるから。お前を一人に絶対せぇへん!」
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