春の詩集

きっと
買ったばかりのころはふかふかだったのだろうクッションが
今は哀れぺしゃんこの、哀愁漂うパイプイス


深くこしかけ漏れてきた

押さえ気味の切ない悲鳴に

心の奥底で

ダイエットしなきゃと呟く

取り敢えず、ノートを開いてシャーペン握って

勉強するフリも、まあ、重要で。




目をとじる

耳をすます

ゆっくりあけて

そっと見る



絵本読んで、と母親にせがむ子供

静かになさいと叱る父親

大きなソファに体を沈め
こっくりこっくり船を漕ぐお兄さん


時計が12時を指し
やわらかな春の午後


いらっしゃいませも
ありがとうございましたも


ここにはない




やさしい沈黙。




.
< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop