春の詩集
きっと
買ったばかりのころはふかふかだったのだろうクッションが
今は哀れぺしゃんこの、哀愁漂うパイプイス
深くこしかけ漏れてきた
押さえ気味の切ない悲鳴に
心の奥底で
ダイエットしなきゃと呟く
取り敢えず、ノートを開いてシャーペン握って
勉強するフリも、まあ、重要で。
目をとじる
耳をすます
ゆっくりあけて
そっと見る
絵本読んで、と母親にせがむ子供
静かになさいと叱る父親
大きなソファに体を沈め
こっくりこっくり船を漕ぐお兄さん
時計が12時を指し
やわらかな春の午後
いらっしゃいませも
ありがとうございましたも
ここにはない
やさしい沈黙。
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