青ビーダマ
氷室は頭に電球を浮かばせ、ニヤニヤ笑った。
「なぁ小夏、俺がお前とそんな、おしべとめしべの関係になりたいとか思うと思ってんのか?」
「!!」
小夏は、氷室の口から図星をつかれた事を発され、少し悲しかった。
「ば…馬鹿!!おしべとめしべは植物なんだから、私達が植物になる事なんてないよ!!」
「…え、ごめん意味が分か…」
ドンッ
小夏は恥ずかしさのあまりに、氷室を地面に叩きつけていた。
無意識のうちだったので、本人もビックリしていた。
もちろん、氷室も。
「…痛ぇ。」
氷室は歪んだ表情で、小夏を睨んでいた。
小夏の顔はサーっと青ざめ、そこから立ち去りたくなった。
「…っのヤロー!!」
「キャー!!」
氷室は悪戯っぽく小夏を追い掛けるが、陸上部のエースである小夏に追い付く事はなかった。
小夏もそれを分かって、無邪気でスキップ混じりで走った。
二人の笑い声は、前の通行人の耳にうるさい程響いた。
草の匂いが太陽の匂いと交じって夏らしい香りに変わる。
二人の足は、夏の季節へと入り込んでいった。
来年の夏には、この笑い声はまったく聞こえなくなる、という事は、太陽は教えてくれなかった。