青ビーダマ

「はーあ、おばば達は限度っつーもんを知らないのか。」

そう言いながら、氷室は頭の後ろをかいた。

小夏は氷室の後ろを歩いて、顔をニヤけさせていた。

「まぁまぁ、いーじゃん。私達をからかう事がおばさん達の楽しみなんだから。」

「お前も、嫌な事はきっぱり嫌って言えよ?」

今の氷室の言葉に、小夏は体を少しビクつかせた。

自分が氷室の事を"好き"と言うのを知らない事を今思い知った。

分かっていた事なのに、なんだか少し悲しくなってきた。

「…そうだね。」

氷室は今の小夏の反応を見て、少し首を傾げた。

あと顔が、哀しげに見えた事も。



******



「本当にいーの?」

小夏は自分の家の前に居て、別の家に入ろうとする氷室を見つめた。

別の家と言っても向かいだが。

「あぁ、まぁよく考えりゃ、俺は男だしな。」

無邪気に笑っているのに、少し過激な事を口にする氷室に対して、苦笑いをした。

「馬鹿。」

「どーせ馬鹿だよ。じゃメールすっから、じゃあな。」

手の平を見せてドアを開ける氷室に、小夏も笑顔を見せて手を振った。

氷室が家の中に入った途端、緊張が途切れて笑みがこぼれた。



こんな姿絶対に見せられないと思った。




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