それでもあたしは、幸せだった。
「無茶苦茶しいひんかったらよかったかな」


ぽつりと呟いた。

小さな紀香、不器用な春樹。

あたしがいなけりゃ、どうなるか分かったもんじゃない。

なのに、あたしはここにいる。

それが何よりの現実なんだから仕方ない…

「歩いていったら、どっか行けるんかな…」

擦り剥いた膝を抱えるように立ち上がって、歩きだしてみた。

歩いても何もないのは分かってる。

分かっているから、歩きたいんだ。
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