ゴーストシンガー
昨日までの連日、小雨が続いていた。
久しぶりに見えた太陽に懐かしさを覚えた頃、その男は現れた。
歳は30代前後で容姿は良かった。
だけど、胡散臭くて簡単には信用出来そうにない人間だと思った。
一目見ただけで警戒した。
何でかは分からない。
女の勘?
第一印象が人間の今後を左右するなら、私の前に現れたことは不利だった。
そっと差し出された名刺を見て、確信した。
――隙は見せられない。