准教授 高野先生のこと
1.些細なきっかけ
こう言ってはなんだけど――
正直はっきり言って、高野先生は学生にまるっきり人気がなかった。
プロレタリア文学なんて地味なことをやっているうえに?
講義のときの話し方は、いつもぼそぼそと聞き取りづらく?
おまけに漏れなく笑いを取るのがすごく下手で……。
先生は色が白くて痩せていて。
しかも銀縁の眼鏡をかけていて。
そして、そんな風貌は余計に女子学生を遠ざけた。
ギスギスと細かく神経質。
関わり合いたくない変わり者。
それが高野先生の専らの評判だった。
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