准教授 高野先生のこと
もしも、先生の好意が頑張る学生に対する愛情や期待であるなら……。
私の高野先生に対する好意は、ある種の“裏切り”なのではないか、と。
“そんなつもりじゃなかったのに……”
“そんなつもりだったなんて……”
先生の好意が純粋であればあるほど、私の好意の不純さが痛い……。
もちろん学生として先生の期待を裏切りたくはない。
だから一生懸命勉強しているわけだし。
けれども――
学問についてだけでなく、もっと別の期待をされてみたいと思ってしまう。
強行に全速前進するわけにもいかず。
かといって、勇気ある撤退をするわけでもなく……。
私は結局もがもがと身動きもとれず考えあぐね、困り果てているのだった。