准教授 高野先生のこと
自宅生だった秋ちゃんの実家は、電車で程近い隣りの市。
お父さんの強い意向で里帰り出産をするというのは聞いていたけれど。
「昨日の夕方すぎにこっち着いてさぁー」
のんびりとした喋り方が懐かしい。
「いっやー、あったかいね、こっちは」
電話の向こうの秋ちゃんは、私が知ってる秋ちゃんとちっとも変わってなかった。
「何しろさ、昨日なんて着いたとたんにさ盆と正月がいっぺんにきたみたいな?」
あっという間に女子大生から妻になってしまった秋ちゃん。
「もんのすごいもてなしかたでさぁ、もうたらふく食わせて売り飛ばす気かって」
妻になったばっかりなのに、もう母になろうとしてる秋ちゃん。
「マジでドナドナされるかと……っていうかシオリン今話してても大丈夫?」
急に遠くへ行っちゃったみたいで、ホントはすごく淋しかったけど――