准教授 高野先生のこと
学部時代、研究室を訪れるといつもお茶を入れて歓迎してくれた森岡先生。
そして、それは今も変わらず同じだった。
「並木先生から色々聞いてるぜ」
「色々って……何を、ですか?」
こぽこぽとお茶を注ぐ森岡先生に背中に聞き返す。
まったく、どんな色々だか……。
「色々はいろいろだよ」
森岡先生がちょっと意地悪くいたずらっ子みたいにくすりと笑う。
「新しい風が吹いたってさ」
「はぁ?何ですか、それっ」
思わずお茶を吹きそうになった。
「ほら、君は外部からでしょ」
「あぁ、そういうことですか」
なにしろ研究室の中は、ほとんどが下の学部から上がってきた学生だから。
しかも今年度は、他大学から入ってきたのは私だけ。
さらに――
「しかもさ、女子は君一人っていうじゃない?結果的に」
「まあ、それは……結果的に」
今現在、“結果的に”は私の学年で女子学生は私一人。
なんというか、この“結果的に”というのがポイントなのだけど。