准教授 高野先生のこと
9.完全休日仕様
恋をすると女の子ってやつは、いろんなことを相手仕様にしてみたくなる。
これは高野先生を好きになって、ようやく初めて実感できたこと。
着る服とかメイクとか、或いは立ち居振る舞い言葉遣いとか。
ひょっとしたら――
飲む物や食べる物、聴く音楽に観る映画に撮る写真……もっと色々なことも。
合わせなきゃ!なんて、そんな仕方なしにじゃなくて。
相手の好みや趣味習慣に自然と合わせてみたくなる。
或いは――
気がつくといつの間にか無意識に合わせてしまっていたりして。
先生と会う時は洋服選びにだって時間がかかるし、メイクにだって慎重になる。
好感を持たれたいという気持ちがあるのは本当。
でもそれだけじゃあない。
好きな人を想ってあれこれと考え工夫するのは、それだけでも楽しいから。
けど、だからといって“片思いのときが一番楽しい”なんて……。
それはやっぱり嘘だと思う。
浮き立つ気持ちの楽しさだけで満たされる期間なんて、きっと――
そうそう長くは続かないのだから……。