准教授 高野先生のこと
ひょっとしてギャラリーの皆さんは本当にコントか寸劇だとお思いなのでは?
先生が狼狽える私を見てわざと意地悪く問うてくる。
「どうする?詩織ちゃん」
「どうすると言われましても……」
なんだか度胸というよりも、これはもう先生への愛を試されているかのようである。
先生がますます楽しそうに、底意地悪くじわりじわりと私をせめる。
「どう?できない?」
“僕のこと、好きじゃないの?”
この状況下の私の脳が勝手に台詞を意訳する。
「でき、ますよ……出来ますとも!」
好き、ですよ…先生のこと大好きですとも!
私は覚悟を決めた。
そして――
まるで合図のように、見守る皆さんに一瞥をくれ、それから秋の海へ振り返った。