准教授 高野先生のこと

ひょっとしてギャラリーの皆さんは本当にコントか寸劇だとお思いなのでは?


先生が狼狽える私を見てわざと意地悪く問うてくる。

「どうする?詩織ちゃん」

「どうすると言われましても……」

なんだか度胸というよりも、これはもう先生への愛を試されているかのようである。

先生がますます楽しそうに、底意地悪くじわりじわりと私をせめる。

「どう?できない?」

“僕のこと、好きじゃないの?”

この状況下の私の脳が勝手に台詞を意訳する。


「でき、ますよ……出来ますとも!」


好き、ですよ…先生のこと大好きですとも!


私は覚悟を決めた。

そして――

まるで合図のように、見守る皆さんに一瞥をくれ、それから秋の海へ振り返った。



< 178 / 462 >

この作品をシェア

pagetop