准教授 高野先生のこと
結果的に22歳の心意気は非常に残念な感じにおわった。
ものすごくバツの悪い私がおそるおそる振り返ると――
年配のご夫婦は顔を見合わせてくすくすと笑い、それから労しげに優しく微笑んだ。
女の子はうっとりと憧憬と羨望の眼差しで見つめていた。
犬は……退屈そうにかぶりをふって、一つ大きな欠伸をした。
遠巻きに見守っていた人々が納得したようにそれぞれその場を去って行く。
先生は必死になって笑いをかみ殺そうとしていたけれど――
「そろそろ、戻ろうか」
結局は堪え切れずに爆笑し涙目になりながら、私の手をとり歩き出した。