准教授 高野先生のこと
11.お付き合いの作法
木曜日、私は学科の図書室で真中君の姿を探していた。
真中君は同じ研究室の同期で、学部時代からの秋ちゃんの仲良しでもある。
お姉さんタイプの秋ちゃんと弟タイプの真中君。
二人は動と静のバランスのとれた、おもしろくてとてもいいコンビだった。
そして、大学院で私がそれに加わった。
決して長い間ではなかったけれど、仲良く3人で楽しい時をともにすごした私たち。
秋ちゃんが退学してからは私が研究室で信頼できるのは真中君だけだ。
ちょっと大袈裟な言い方かもだけど、実際そう。
おっとりとしたマイペースな性格の真中君。
彼は同期の男の子の中ではちょっと異色な存在なのだ。
他の同期の人たちは皆明らかにライバル意識を先行させている。
いつもどこか隙あらば自分が一歩先に抜きん出ようと狙っているような。
そういった中でも真中君は“自分は自分”という姿勢を崩さないでいられる人。
“結果は必ず後からちゃんとついてくる”というのが彼の持論。
彼は先輩に噛み付くことはあっても、同期を蹴落とそうとは決してしない。
彼の悠々としたところって、すごくいいなと思う。
黙々と淡々と取り組む姿勢も好きだなって思う。
もちろん、友達としてだけど。
もとより研究者を目指していない私は、志のある彼を心から尊敬し応援していた。