准教授 高野先生のこと
真中君を探して図書室の中をうろうろ、きょろきょろしていると――
「シオリン、探し物?」
探し者のほうから私に声をかけてきた。
振り返ると、葉山嘉樹全集を持った真中君がそこにいた。
「探しモノは真中君だよ」
「ボク?」
「そう。“ボク”」
そういえば葉山の全集は高野先生の研究室にもあったっけ……。
とりあえず図書室は基本的には私語厳禁。
そんなわけで、図書室を出て校舎の1階にある自販機コーナーへ移動した。
こういってはなんだけど、この大学はいつだって――
私が学部時代をすごした大学と違い、薄汚れていて薄暗い……。
そりゃあミッション系のお嬢さん大学と国公立大学を比べるのは酷かもだけど。
窓も少なく光の差さないこの陰気な空間。
それは人の心をいたずらに窮屈に憂鬱にさせる。