准教授 高野先生のこと
今度の日曜はどうしても会いたかった。
この週末は、とてもとても特別だから。
何があっても、何がなんでも。
一目でもいいから先生に会って、一言でもいいから言葉を交わしたかった。
そうしなければ、と強く強く思っていた。
「お誕生日のお祝い、させてください」
私は先生の手の上にさらに自分の手を重ねた。
「お祝い、してくれるの?」
先生が重なった私の手の上に、さらに自分の手を重ねる。
「もちろんです」
そして、私はさらにさらに、その手の上に自分の手を重ねた。
もうこのまま続けたら、どこまでいってもきりがなさそう……。
「楽しみだな、すごく」
先生はにっこり笑うと、重ねあった手をとんとんと揺らしてそっと離した。
先生の特別な日をともにすごせる特別な私。
幸せすぎて胸がきゅーっといっぱいになった。
そうして、車を降りた私は立ち尽くして――
遠ざかる先生の車を、見えなくなるまで見送ったのだった。