准教授 高野先生のこと

秋ちゃんのうちを訪れるのはもう何度目になるだろう。


大学院に入学したばかりの頃、私は毎週末のように彼女の家におよばれしていた。


あとで知ったことだけど、それは秋ちゃんのお母さんの勘違いの気遣いだったのだ。


お母さんは私が一人暮らしを始めたばかりと思い込んで、可愛そうに思って……。


淋しくてホームシックにでもなったらと心配して声をかけてくれていたのだ、と。


秋ちゃんの情に厚いところは、そんなお母さん譲りなのかなって思う。


ちなみに、お父さんは企業専門の弁護士でとても厳格なかただったりする。


中高生の頃、秋ちゃんはそんなお父さんに秘かに反発していたらしい。


いつもダントツの優秀な成績を維持しつつ、陰では濃密な恋愛に全力投球していたのだ。


中学のときは家庭教師の大学生と。

高校のときは予備校講師と。

そして――

大学では大学教員である夏川さんと恋に落ちて、そんなこんなで今に至る、と。


秋ちゃんは何故か“先生”と呼ばれる人とばかり恋に落ち続けてきたのである。



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