准教授 高野先生のこと

土曜日、私はうちで一人、先生からの連絡を待っていた。

7時半をまわった頃、ようやくケータイに着信が!

今日一日ずーっと待ちわびた、先生からの連絡だった。


「あ、もしもし。僕ですけど……」

こういう名乗りかたっていいなと思う。


たぶん、連絡はメールじゃなくて電話かなって……そう思ってはいたけれど。

実際ホントに電話だと、まだ慣れなくてやっぱり少し緊張する。


「お疲れ様です」

「うん。おつかれさまです」

まるで職場の挨拶みたい。

ちょっとしたぎこちなさが、なんだか少しくすぐったい。


「晩ご飯は?ちゃんと食べた?」

「食べました、ちゃんと」

先生が休日出勤で他の先生たちと夕食を済ませてくる予定だときいていたし。


だから――

“食事でも、どう?”

なんて口実はもうあり得ない。


私たちはこれから……この時間から会おうとしている。

ただ純粋に、お互いに会いたいという理由だけで。




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