准教授 高野先生のこと

会いたいということが、ただそれだけで立派な理由になるなんて。


なんて素敵なんだろう。

なんて幸せなんだろう。



先生はまだ大学の駐車場でようやく車に乗り込んだところだった。

「どうしたい?これから」

また、だ……。

この前だってそうだった。


先生はこんな時ちょっとずるいと思う。

私に決めさせようとするなんてずるい。


いざとなったら――

“君がそうしたいって言ったんだ”

そんな免罪符を出すつもり?


だけど、そうは問屋が卸さない。

私だって……。


「先生が決……」

「僕が」

思いがけず、言葉を遮られた。




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