准教授 高野先生のこと
3.二人で見る月
私にとって男の人の車の助手席に乗るなんてことは――
それはもう大大大大大事件!である。
だって私は彼氏いない歴が年齢と等しいという……。
そんな粗末な22歳なのだから。
先生の車はシルバーのヴィッツで、なんとなく先生っぽいなって感じがした。
もっとも――
私が高野先生のことをどれほど知っているのかというと……。
それを思うと、ちょっぴり悲しくなってしまうのだけど。
「コンパクトで機能的な車なんです。僕のお気に入りです」
先生はそんなことを言いつつキーを解除。
先に車に乗り込むと“どうぞ”と中から助手席のドアを開けてくれた。
気のせいだろうか?
さっきから先生はとてもご機嫌な様子で。
「じゃあ、行きますか」
「はい」
「途中、ちょっと郵便局に寄らせて下さい」
車は夜の街へと滑らかに走り出した。