准教授 高野先生のこと
車に戻った先生は私に安堵の笑顔を見せてくれた。
「無事に旅立っていきました。鈴木さんのおかげです」
「そんな、私なんてぜんぜん……」
先生に優しく笑いかけられると、胸がきゅっと苦しくなる。
シートベルトを締めた先生が、ふと私にたずねる。
「鈴木さんは自宅生ですか?」
きっと門限の心配でもしてくれているのだろうと思った。
「一人暮らしです」
「じゃあ、一緒に晩ごはんでもどうですか?」
「ええっ!」
なっ、ななななんという!?
「今日のお礼にご馳走します」
「そんな……」
「駄目でしょうか?」
「駄目だなんてそんな……」
「なら、行きましょう」
ご機嫌な先生と動揺する私を乗せて、車が再び走り出す。