准教授 高野先生のこと

今朝の私に現在のこの展開が想像できたであろうか?

いや、できない(反語の返り)。


「鈴木さんは今食べたくないものって何ですか?」

「はい?」

緊張しているせいで、聞き違いをしているかと思ったけど――

「食べたくナイもの、です」

そうではなかった。


「食べたいものじゃなくて……ですよね?」

「いや、まあ。食べたいものがあればそれでいいんですが」

先生の言わんとすることがイマイチよくわからない。


「食べたいものって聞かれると困ったりしませんか?」

そう言われても……。

男の人からそんなこと聞かれたことがないのだけど。

「僕は困ってしまうんです」

先生はそう言うと、それこそ困ったように小さく笑った。


「だけど、なんとなく気分じゃないものなら意外と簡単に出てきませんか?」

そんなこと、今まで考えたこともなかったけど……。

中華じゃないんだよなぁ、とか?

刺身はちょっとなぁ、とか?

本当だ、確かに先生の言うとおり!


「そうかもしれないです」

私はものすごく納得した。


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