准教授 高野先生のこと

こういうことって、ほんっと人それぞれなんだろうけど。

やっぱり想像というか、想定していた感じとは少し違っていた。


だって――

失うとか壊れるとか、そういう衝撃?を漠然と想像していたから。

そうやって何かを失ったり、一度バラバラに壊れてしまって、初期化?されて。

そこから今までとは何かが違う新しい自分がつくられていくのかなって……。

だけど――

実際はガツンと衝撃を受けたり、ガラガラと壊れたりはしなかった。


溶けるとか、ほどけるとか、そんな言葉のほうが合っているような。

そう、思ったよりもとても滑らかで、緩やかなものだったのだ。


ずっと目の前には行く手を阻むように、深い深い溝が横たわっていたはずなのに。

振り返ると、そんな溝はなかったのである。



「こういうときって、何を、何て言ったらいいんでしょう???」

「相手の名前を呼んで抱きつけばいいんだよ」

「うーん」

「そこ、考えるところかなぁ……」


当然ながら、一瞬で大人に大変身できるわけでもなく。

私は、私のままだった。


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