准教授 高野先生のこと
先生はベテラン主婦も顔負けの素晴らしい手早さでオムレツを作ってくれた。
「こんなことばっかり巧くなってさ。まったく悲しくなっちゃうよね」
「いいじゃないですか。お料理は、とってもクリエイティブな作業ですよ」
やや自嘲気味に先生は笑ったけれど、私は本気で尊敬の眼差しを向けた。
とてもつまらないことなんだけど、私はひとつ安心したことがある。
それは、朝ごはんを食べる前に着替えなくてもいいってこと。
基本“ダラ”な私は休みの日は1日パジャマですごしたって気にならない。
だけどもし――
“朝食の前にはきちんと着替える!”
なんて先生がきちきち言う人だったら、合わせないわけにはいかないし。
これからもっと濃ゆーく、もっと長ーく、一緒にすごす私たち。
育った環境や生活習慣、色んな違いや色んな一緒を発見していくんだ……。
なーんてことを私はトーストを齧りながら、ぼんやり思った。