准教授 高野先生のこと

帰りは先生が皆を車で送ってくれることになった。

「真中君はY大の近くでしたっけ?」

「あっ、今日はボクこのまま実家に帰るんで。駅で降ろしてもらえたら助かります」

「あんた、またあの爺さんの手伝い?」

「うん。地鎮祭があってさ」

県北にある真中君のご実家は多くの氏子さんを抱える由緒ある神社。

秋ちゃんは何を隠そうその神社で巫女さんのバイトをしたことがあった。

そのときに、“処女と非処女では時給が違うのか?”と真中君や宮司であるお祖父さんを絶句させたとかなんとか……。

「真中君が古事記や日本書紀に詳しいのは、ご実家が神社だったからなんですね」

「子どもの頃から普通に聞かされてましたらからね、神様たちのお話を」


私の緊張感はすっかり緩んでいた。

このまま何事もなく真中君を駅で降ろして無事に勉強会は終了かな、って。

ところが――

「あの、すみませんけどボク、はっきり言わせてもらいますね」

真中君はすんごいことをはっきりきっぱり言い放ったのである。


< 320 / 462 >

この作品をシェア

pagetop