准教授 高野先生のこと
やっぱり私の気のせいではなかったのだ。
真中君は高野先生の研究室に入った瞬間に気づいていたのである。
その、特殊な体質とやらで……。
「真中もさ、どうせ特異体質ならさ、勝ち馬がわかるとか?
ロトの当選番号がわかるとか?
そういう体質ならよかったのにねぇ。
弱み握ってゆするのは恐喝だからね。
そりゃあ、できっこないもんねぇ」
法律家の娘はそんなことをさらっと言った。
「まったく、アッキーの言うとおりさ。
こんな体質ね、本当に疲れるばっかりだから。
なんていうか、こっちが恥ずかしくなってしまうんですよ。
あああっ、誤解しないでくださいね。
その……その人たちが、そういうことをしてる光景が見えるとかじゃないですから。
本当は、すべてをボク一人の心うちにしまっておければいいんでしょうけどね。
でも、これがけっこう辛いんです。
だって、もしボクが知ってるって、うっかりぽろっとバレちゃったら……。
気づかないフリされてたってほうは気分悪いですよね?
もうね、ボクそういうの気にして緊張してるの耐えられなくって。
だから白状しちゃいました。
このとおり、すみません!」
真中君はそういって、神頼みするように先生と私を拝んだ。