准教授 高野先生のこと
先生がそんな心配をしていたなんて思いもよらなかった。
それに……。
「彼女はね、なんというか少し“過ぎる”ところがあるんです。
頑張り屋なのはいいのですが、ときどき頑張りすぎてしまうというか。
慎重さは大事ですが石橋を叩きすぎて壊してしまうようなところもあったりしますし。
あとは、言葉は悪いですが“バカ”がつくくらい真面目なんですよね。
ですから――
もしも彼女が行き詰ったり、息切れしそうになっていたら。
同期の親友のよしみでビジッとバシッと止めてあげて下さいませんか?
まあ、彼女は頑固ではありますが人の気持ちのよくわかる繊細な人ですから。
真中君の助言であればちゃんと意味を理解して有難く耳を傾けると思うんです。
それから、秋谷さんも。
僕なんかがお願いするまでもないとは思いますが。
ずっと彼女の親友でいてあげて下さい。
大学時代の友人ってね、意外と生涯の友になったりするものです。
秋谷さんは色々落ち着いたらまた札幌に戻られるわけですが。
どうか彼女のこと、ときどきでも結構ですから気にかけてやって下さい。
そして、どうぞ頼ってやってくださいね。
重ね重ねお願いばかりで申し訳ありませんが、本当に。
お二人とも、どうかよろしく頼みますね」
先生がこんなにも私のことを見ていてくれたなんて。
私の為ならいつだって誰にだって、いくらだって頭を下げちゃうんだなって。
それを知って目の当たりにしたものだから、私はもう……。
その想いの深さに心がふるえ、胸がぎゅうっといっぱいになった。