准教授 高野先生のこと

今日はそのまま、先……寛行さんのうちに泊まることになっていた。

“二人きりのときは“先生”ではなく名前で呼ぶ!”

そう決めた私は、それはもう涙ぐましい努力をしていた。

キレイに洗って乾かした大きなジャムの空き瓶を用意。

そして、それを――

うっかり“先生”と言ったら罰金として金100円申し受けます、という瓶にした。

悔しいかな悲しいかな、瓶の中にはすでに何枚か百円硬貨が入っていたりする……。


晩ごはんも食べて洗い物も片付けた私はすっかりまったり寛ぎモード。

床にごろんと転がって、猫みたいにとぐろを巻いて?お風呂がわくのをごろごろ待つ。

エアコンは一旦止めてオイルヒータだけで暖を取っていたけれど寒くはなかった。

たぶん寛行さんがわたし用に買ってくれた、この半纏のおかげ。

人によってはこの所帯じみた感じを嫌だと言うかもしれない。

でも、私は逆にそこがとってもお気に入り。


同じくぞろっと半纏を着た寛行さんがお風呂場のほうから戻ってきた。

「お風呂入るけど、どうする?」

「ん。私も入るですよ」

私たちの仲良し度は一緒にお風呂に入ってしまうくらいに上昇中。

だけど?なのに???何故か???

どうも敬語はすぐには抜け切らず、ときどき奇妙なかたことに……。


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