准教授 高野先生のこと
大学へ着くとまずはまっすぐに図書館へ。
頼まれた文献をサクサク探して、どんどん資料を集めていく。
こういう作業は、実は私の得意分野だったりして。
思った以上に早く用事は全部片付いた。
急ぎとは言え並木先生からは今日中に資料が手に入ればよいと言われていたし。
ちょっと、寄り道しても大丈夫だよね?なんて……。
思い切って、高野先生を訪ねてみようと思った。
先生から借りた本はまだ私が持ったままだけど。
事前に連絡をとって、今日この機会に返すこともできた。
けれども……わざとそうしなかった。
先生に会うための大事な口実がなくなってしまうのが嫌だったから。
突然だし、高野先生は不在かもしれない。
だけど――
もしも、もしかしたら、幸運にも先生に会えることができるかも。
そんな思いで私は研究棟へ向かった。