准教授 高野先生のこと
昨夜、寛行さんが帰ってくるまで私は起きて待っているつもりだった。
けれども――
疲れていた私はついつい知らぬ間に眠っていて……。
そして、時刻が午前3時をすぎたあたり。
急にぱちっと目が覚めた。
眠りが深く十分にやすめたせいか、タイミングがよかったのか。
とてもすっきりと覚醒した感じで。
起きたくて起きたわけじゃなかったけど、起きてしまったものはしかたなく。
目が冴えてしまった私は真っ暗な部屋でしばらく……ごろごろ、うだうだ。
だけど――
寛行さんがいないこのうちは、がらんとしていて殺風景で。
一人で眠るこのベッドは、無駄に広くて淋しくて。
そうこうしていると、玄関のほうからガチャガチャ、バタンと物音がして――
私はガバッと飛び起きて、現場急行よろしくパタパタと玄関にかけつけた。
まるで飼い主のご帰還で感激に打ち震える犬みたいに。
「おかえりなさい」
「ただいまなさい」
いつもの彼の奇妙な挨拶、高野先生じゃなくて私の寛行さんが帰ってきた。