准教授 高野先生のこと
私は抱きついたまま離れずにしがみついたままのかっこうで、
ずりずりと引きずられるようにして彼と一緒にベッドまで辿り着いた。
剥がすように彼のコートと上着を脱がせ、それを手早くクローゼットにしまいこむ。
そしてまた性懲りも無く?彼にひっしとしがみつく。
彼はベッドにどっかと腰を下ろすと面倒臭そうにネクタイを緩めた。
「もう骨の髄まで酔っ払いだよ」
「お酒くさいもんね」
「あー、呑んだー、呑まされたー」
彼が私を道づれにベッドに仰向けに倒れこむ。
私はくすくす笑って、さらに彼の匂いをくんくんかいだ。
いつもはだいたい洗いたてのお洋服のいい匂いなのだけど、今夜は……。
はじめて彼から煙草とお酒の匂いがした。
「誰に呑まされたの?」
「んー、3人で呑ませあったって感じ?」
「森岡先生と田丸先生?」
「そっ」
森岡先生んちの出産祝い、田丸先生んとこの結婚祝い、それから……。
「僕は、彼女ができて良かったねって」
自分が一番呑まされた気がする、と彼は釈然としないって表情をみせた。
「僕が“枠”だからってひどいよ」
「枠?“ざる”じゃなくって?」
「うん。いくら呑んでも変わらないし」
確かに……。
ひどくお酒くさいけれど、それ以外はいつもどおりの寛行さん。