准教授 高野先生のこと
4.


初めて君を抱きしめたとき、

ぎゅっとしたら壊れてしまいそうな、

その細い肩や薄い背中に、

僕は、胸がつまりそうになるくらい、

ますます君への愛しさが募りました。

君は自分の大切な「初めて」を、

惜しげもなく僕にくれるのに、

いつも僕は、もらってばかりです。

どうしても、人は過去へは戻れないから、

残念ながら、僕のすべての「初めて」を、

君にあげることはかないません。だけど…

だから、お詫びと言ってはなんですが、

どうか、この手紙を受け取ってください。

何を隠そう、これは僕にとって、

生まれて初めてのラブレターです。

その証拠を提示できないのが残念ですが、

本当にほんとうです。

詩織さん、誰よりも君のことが大好きです。

君の隣りにいさせてくれてありがとう。

僕の隣にいて下さってありがとう。

そして、これからも、

ずっと僕の隣りにいて下さいませんか?

君を、いつまでも大切にすると約束します。

僕がラブレターを送るのは、

後にも先にも、たった一人、君だけです。


                   高野寛行

< 387 / 462 >

この作品をシェア

pagetop