准教授 高野先生のこと
寛行さんがいない一人きりの淋しい夜。
彼が残していった空気だけを感じながら、隣りにいない彼を想う。
私はそこつなサンタの早すぎるクリスマスプレゼントを思い出した。
好きな人が私のために心をこめて書いてくれた水色のラブレター。
しかもそれは彼にとって生まれて初めて書いたラブレター。
彼は手紙で誓ってくれた。
ラブレターを送る相手は後にも先も私だけ、一人きりだと。
考えてみると私たちの恋には、いつだって手紙がかかせなかった。
私が彼に送ったお見舞いの手紙、すぐに届いた彼からの返事。
毎日つづくまるで交換日記のような、とりとめのないメールのやりとり。
私たちの恋は互いの言葉に心惹かれたのをきっかけに始まったのだ。
それからもずっと――
たとえ会えない日でさえ、私たちは相手の為に言葉を紡ぎ、贈り合ってきた。
そうして心を通わせながら、かけがえのない関係を築いてきたのである。
私も寛行さんに手紙を書こう。
人生初のラブレターを彼に贈ろう。
まずは便箋選びからだけど、やっぱり白?それとも薄いピンク?
なんだか下着選びみたいだなぁ、なんて。
そんなことをぶつぶつと考えているうちに――
いつの間にか、私は明日へ向かう夢の時間旅行に旅立っていた。