准教授 高野先生のこと
翌日の夕方。
授業が終わった私は速攻で松蔵のスイートポテトを買いにデパ地下へ。
その足で、秋ちゃんが入院するY大医学部付属病院へと向かった。
秋ちゃんの病室は6人部屋で、どうやら妊産婦さんばかりではなさそうだった。
「ホントに来ちゃったよ」
「サンキュッ。ちょっと出よっか」
「うん」
パジャマ姿の秋ちゃんに連れられて、ささっと静かに病室を出る。
「全部筒抜けでさ。お互い気ぃ遣うんだ」
「なるほどね」
きっと、カーテンのみの仕切りではお互いに聞く気がなくても聞こえてしまうのだ。
階段を上がったり連絡通路を通ったりするうちに、秋ちゃんの穴場とやらに到着。
陣痛を正しく呼ぶために?病棟中を散歩していて、ここを見つけたのだという。
「見事に人がいないね」
「イスがあるほうが不自然なんだって」
すぐそばにある部屋は検査室か何からしい。
けれども、検査を出す人も結果を待つも現れる気配はまったくなかった。