准教授 高野先生のこと
こういうのを達観しているというのではないだろうか。
それとも、出産間近の妊婦の皆さんはみんなこういう心境なのか……?
「秋ちゃん、悟りをひらいてる感じだね」
「んなこたぁないよ。怖いこと言うけどさ、死ぬ可能性だってゼロじゃないんだよ」
「えええっ!」
「あーあ、これがあたしの人生最後の松蔵のスイートポテトかもしれないなぁ」
「ちょっ……何、へんなこといってんの!」
「えへへ、なーんてね」
私は本当に泣きそうになっていた。
出産は命がけという言葉を聞いたことがあったし、絶対という保障はないのだから。
秋ちゃんの両手をとって、ひっしと力強く握る。
「退院したらいくらでも食べさせてあげるからねっ!!」
「わーお!太っ腹~!」
「太っ腹でも三段腹でもいいよ。ちゃんと普通に無事でいてよね」
「ここは天下のY大病院だよ?大船に乗った気でいようじゃないのさ」
秋ちゃんはにっこり笑って私の肩をぽんと叩いた。
あぁ、お見舞いに来ておいて逆に励まされてるなんて……。
ほんっと私ってしょーもない……。