准教授 高野先生のこと

秋ちゃんを病室へ送り届けて……っていうか――

迷子状態の私は彼女の後に付いて病室まで戻った。

別れ際、私たちは他の患者さんの目も気にせずに、ひっしとかたく抱擁した。

「今日は来てくれてありがとね」

「うんん。私こそありがとう」

「シオリンがいてくれてよかった」

「私だってだよ。明日ね、F女はクリスマス礼拝なんだよ」

「そっか、懐かしいなぁ」

「私ね、秋ちゃんの無事を全力でお祈りするって決めてるから」

「そりゃ心強いね。生まれたら家族の次にシオリンに知らせるからね」

「うん」

そうして私は手を振る秋ちゃんに後ろ髪をひかれつつ病室をあとにした。

帰る途中、街で一番大きな文房具屋さんに立ち寄った。

クリスマスカードとバースデーカードを買うために。

今年はクリスマスカードを贈りたい人がたくさんいるから。

そして、バースデーカードは秋ちゃんに。

出産おめでとうではなく新しい家族の誕生を祝して贈りたい、と。

今年の12月はなんだかとっても大忙し。

そんなことをしみじみ思いつつ、私はほかほかの心のまま家路についた。


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