准教授 高野先生のこと

翌日の夕方、私は3枚のクリスマスカードを携えて母校F女学院大学へ向かった。

この大学のクリスマス礼拝に出るのは、今年でまさかの?5度目になる。

だいたい礼拝に出るのは物見遊山の1年生か、最後の記念の4年生くらい。

他には教職員の人とか卒業生と思しき年輩の女性がちらほら、と。

私が今年もクリスマス礼拝に出ようと思ったのは、愛校心?信仰心?

残念なら、どちらもハズレ。

正解は、ちょっとした“いたずら心”から。

“今年のクリスマス礼拝には僕も出るつもりなんだ”

いつぞや彼がそう言ったのを、私は目敏くならぬ耳聡く?聞き逃さなかった。

ちなみに、私が今日ここへ来るのを彼は知らない。

礼拝堂でばったり会ったら彼はどんな反応をするのだろう?

彼の驚く顔を見てみたかったのである。

お互いに気づけば気づいたでそれでよし。

もしも、気づかなかったら――

それはそれで、あえて声はかけずにそのまま帰ろうと思っていた。

あとで“実は私もいたんだよー”なんてネタばらしするとして。



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