准教授 高野先生のこと
始まりの奏楽が流れ出し、礼拝堂全体が一気に静まりかえり厳かな空気に包まれる。
荘厳な深みと温かみのあるパイプオルガンの音色に耳を澄ませ、私たちは皆沈黙した。
久しぶりの礼拝に新鮮な気持ちが甦り、心が洗われるようだった。
私は牧師先生の有難いお話を聞き、賛美歌を歌い、そして祈った。
秋ちゃんが無事に元気な赤ちゃんに出会えますように。
森岡先生のお嬢さんが健やかに成長されますように。
田丸先生の結婚生活が幸多きものでありますように。
礼拝が終わったあとは予想通りの展開が待っていた。
「よろしければ、水原先生も鈴木さんもお送りしますよ」
寛行さんは私をうちへ持って帰ってお説教をするつもりに決まっている。
もう今日のお説教は牧師先生の有難いお話だけでお腹いっぱいなのに……。
「これはお気遣い恐れ入ります。でも、ぼくは滝口牧師と少しお話があるので」
「あのっ、私はバスで帰れますから」
「おや、鈴木さんは送っていただいたらいいですよ。時間も時間ですからね」
水原先生の優しい心遣いがかえって私を苦しめるとは、なんともかんとも……。
「遠慮はいりませんよ、鈴木さん。それとも僕の運転が心配ですか?」
ああ、寛行さんのこの底意地の悪さったら、天下一品なのだから。