准教授 高野先生のこと

私が駐車場で待ってると言うと――

「だめ。君はとんずらこいちゃうかもしれないからね」

「とんずらって……」

彼は私を強制的にずるずると研究棟まで連行していった。

不貞腐れた私は研究室へは入らずに、廊下をうろうろして彼の帰り支度を待った。

室内はもちろんだけど、ドアだけ見ても先生がたそれぞれの個性が垣間見られる。

ふと、的場先生の研究室のドアの前で立ち止まる。

ドアのところにB5の紙が貼ってあり、そこには――

“めりーくりすます あんど 

 はっぴーにゅういやぁー!”

毛筆でメッセージが書かれていて、なおかつ右下のほうには――

サンタの帽子をかぶった的場先生の似顔絵と、帽子を脱いだ似顔絵が!

サンタのほうはともかく、帽子を脱いだほうの先生は……。

わざとなのだろうけど、その……。

先生の髪の毛の切実な現状がリアルに再現されていて……思わず苦笑。

そういえば学部生の頃、おもしろい噂があったっけ。

的場先生の授業のレポートでエクセレントな内容だと――

なんと!先生の似顔絵つきで返ってくるという。

そんな母校の思い出が可笑しく懐かしくて、私は一人でくすりと笑った。


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