准教授 高野先生のこと

私は寛行さんの誕生日のときに彼が言った言葉を思い出した。

「寛行さん」

「うん?」

「神様って迅速対応なんでしょ?」

「うん、そうだよ」

ただ、その神様と聖書に出てくる神様が同一神様?かどうかはちょっと……。

でも――

「私ね、今日ちゃんと神様にお祈りした」

「秋谷さんのことだね」

「神様、ちゃんと対応してくれるよね?」

「大丈夫だよ」

「本当に?」

「僕が念を押しておいたから」

「念を押す?」

「僕はカッコつけて、君の祈りが届きますようにって祈ったからね」

「そんな……カッコつけすぎです」

彼の温もりが心に沁みて、沁み入って――

私のもう……ぐっときて、じんときて、きゅんとした。

「寛行さんが念を押してくれたなら、きっと大丈夫だね」

「でしょ?」

「しつこそうで面倒くさそうだから、ちゃちゃっと聞き届けてくれそう」

「そんなに誉められると照れるなぁ」

「もうっ、誉めてないし!」

とぼけたことを言う彼に苦笑しながら、私は改めて心の中で――

秋ちゃんと赤ちゃんの無事を望み、願い、祈り、そして、心から信じたのだった。


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