准教授 高野先生のこと

今は思わない、時間が止まってしまえばいいなんて。

だって――

私たちはこれから二人で、一緒に時を重ねていくのだから。

沈み行く夕日も、昇り来る朝日も、

真昼の眩しい太陽も、夜空に浮かぶ満月も、

二人仲良く並んで眺めて、いつも一緒に移ろう時を感じていこう。

春の輝きも、夏の匂いも、

秋の淋しさも、冬の閑かさも、

みんなみんな二人で感じて、いつも一緒に移ろう季節を眺めていこう。



寛行さんは、約束通り実家ではなくその“周辺”まで送ってくれた。

家のすぐ側は避け、近所のドラッグストアの駐車場で車を降りる。

「ここから近いの?」

「うん、歩いて10分もかからないから」

12月の空は日が短く、太陽はすっかり店じまいしてひっこんでいた。


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