准教授 高野先生のこと

先生は顔色もよく思いのほか元気そうだった。

「アイス、すごく食べたかったんです」

そんな喜んだ先生の笑顔はまるで無邪気な子どもだった。

「美穂ちゃんに……森岡夫人に怒られて自粛してたんです」

美穂ちゃん……。

いただいた年賀状で見たことがあった森岡先生の奥さんの名前。


先生たちにも私と同じ歳の頃があったのだ。

そんな当たり前のことをふと思う。

高野先生の学生時代。


真面目に勉強もして?

真面目にバイトもして?

真面目に遊んだりもして?

真面目に恋愛、なんかもして?


先生は私よりも10年も長く生きている。

10歳の年の差、10年分の隔たり。

それを思うと――

ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだけど、切なくなった……。


< 49 / 462 >

この作品をシェア

pagetop