准教授 高野先生のこと
高野先生といろんな話しをした。
文学理論の本の中で理解できなかった箇所を解説してもらったり。
最近ゼミで話題になったことを聞いてもらったり。
先生の今年の講義のネタを聞かせてもらったり。
そうして時間は、あっという間にすぎていった。
仕方なく左手首の腕時計に目を落とす。
「いい時間ですよね」
すごく名残惜しかったけど、疎まれることが怖かった。
「あぁ、もうこんな時間でしたか」
先生は壁の時計に目をやった。
「僕はあと少しですが仕事があります」
先生はやれやれと困ったように微笑んだ。