准教授 高野先生のこと
今日の作業は前回とはちょっと趣きが違うようだ。
ベタで入力(ポチポチ)
読み合わせ(ヨミヨミ)
読み合わせ(ヌリヌリ)
なにしろ、読み合わせは先生との共同作業なものだから。
仕事なのに、ついうっかりはしゃいでしまいそうになったりして。
喉を使う作業なんて、今の先生にはとてもさせられないので――
「私がヨミヨミで、先生はヌリヌリでお願いします」
私がハキハキと読み上げ、先生には該当データのチェックをしてもらった。
一見たいそうな量に見えたけど、作業は意外とあっさり片付いた。
だけど――
これを一人で目視でやってたら、それは大変だったに違いない。
「すごいです。鈴木さんと一緒だとあっという間でした」
「二人でやったらなんてことなかったですね」
「僕は、楽しかったから」
「えっ」
「時間がぐにゃりと歪んでしまいました。あっという間に」
高野先生と一緒にいると、どうしてこんなに楽しいのだろう。
私の時間なんてもう、思い切り歪みまくりで収集がつかない。