准教授 高野先生のこと

「すみません。若い女性を相手に無神経でした。失言です」

「若くなけれよかったという話でもないと思いますが?」

私の意地悪もかなり勢いづいてきた。


「ごもっともです。重ね重ねもう、なんと言えばよいか……」

「先生……」

堪え性のない私は、すぐに仏心が出てしまう。


「怒ってないです」

「え?」

「ぜんぜん、怒ってないです」

先生はきょとんとした表情のまま首を傾げた。

「本当に?」

「本当です」

こんなことくらいで怒るわけがない。


先生の表情が安心したように、みるみるうちにほわんと緩む。

すごく、可愛かった。


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