准教授 高野先生のこと
2.先生のお手伝い
母校の大学を訪れるのは久しぶりだった。
同じ市内にあって、そう遠くはないというのに。
直接の師弟関係にない高野先生を訪ねるのは気楽なものだ。
けれども――
母校を訪ねるからには恩師を無視するわけにはいかない。
それが少々気重だったりして……。
ゼミの担当であり、私の恩師の森岡先生。
あぁ、いったいどんなお小言を言われるやら……。
私はちょっといいことを思いついた。
そうだ!森岡先生を先に訪ねてから高野先生のところへ行こう!
“これから高野先生に用事があるので”
その大義名分のもとに早々に退散する。
この戦略でいこうと決めて私は森岡先生の研究室へ向かった。